地図と絵図
2016年(平成28)3月29日から10月9日まで、当館展示室で所蔵資料展「地図と絵図」を開催しました。
当館が所蔵するさまざまな地図資料の一部をご紹介しながら、沖縄の歴史を振り返ります。
■琉球・沖縄のかたち
■日本と琉球
■戦前の地図
■沖縄戦の地図
■戦後の地図
■琉球・沖縄のかたち
いにしえの人々にとって、琉球・沖縄のかたちは、どのように見えていたのでしょうか。
朝鮮でよく描かれた絵図帳には「天下図」から始まる11種の地図が収められており、この中に琉球国図も含まれています。
18世紀にヨーロッパで出版された事典の附図として作成された地図には、Liqueioと表記された琉球が確認できます。この頃、冊封使として北京から来琉した人々の著した書にも琉球の図が描かれており、そのイメージは東アジア世界に伝わりました。
幕末の日本では、国防意識の高まりを反映して、琉球を書き込んだ地図が広まりました。やがて琉球は、廃藩置県を経て沖縄県となり、日本本土からやってきた人々によって「沖縄県管内全図」などが作成されました。
琉球の絵師の手になると思われる「首里那覇鳥瞰図」は、首里城に兵士の影のない、廃藩置県以前の首里那覇の面影を描いています。
1.首里那覇鳥瞰図 |
2.地図 朝鮮国図并中国日本琉球図 |
3.琉球国全図 |
4.沖縄県管内全図 完 /久米長順(茨城県士族)作成 |
5.Maps: Japan Far East /N. Bellin |
6.Description Des Iles Lieoou-Khieou /M.J.Klaproth. |
7.琉球及属島三十六 |
■日本と琉球
19世紀の日本では、朝鮮国・琉球国・蝦夷国といった近隣地域と、日本の「国境」を意識した地図が作られました。世界地図、万国地図を意味する「輿地図」(よちず)も広まりました。
日本が近代国家としての歩みを進めるうちに、琉球国は沖縄県として、蝦夷国は北海道として、さらに小笠原諸島も、その版図に書き込まれていきました。
8.三国并無人島并接壊絵図 |
9.大日本接壊(壌)三国之全図/文操閣史好舎 |
10.大日本唐土 輿地全図 嘉永七年版 |
11.銅刻 琉球諸島全図 全 /大槻文彦 |
12.北海道諳射訳図 琉球諸島諳射訳図 |
13.大日本朝鮮八道支那三国全図并 琉球沖縄県小笠原島開墾図 |
■戦前の地図
沖縄が日本の管内としての位置を固めるにつれて、沖縄と日本本土との人の行き来が繁くなり、観光案内的な地図も普及するようになりました。身近な地域を範囲として、鉄道や馬車軌道を見やすく示すような、日常の市民生活で使用される地図も出てきます。
いっぽうで、軍事用の地図の技術も向上し、沖縄を中心に、鹿児島、中国大陸東岸、台湾北部まで広大な範囲を収録した海図も作られました。軍用地図には大東諸島や魚釣島のような国境の島への関心も見てとれます。日米開戦後の米軍も、沖縄侵攻作戦を計画するなかで、日本軍が調製した地図を入手して情報を追加し、正確な作戦地図を作り上げていきました。
14.沖縄県地誌略 全 /沖縄師範学校編纂 |
15.大日本管轄分地図 沖縄県管内全図 琉球全図 明治33年訂正再版 /後藤常太郎著 |
16.沖縄県管内図 |
17.沖縄航路案内/大阪商船 |
18.与那国島案内 |
19.日本自鹿児島海湾至台湾 附近支那東岸 /海軍水路部 |
20.米軍作成地図 AMS L791 琉球列島地図(5万分の1) 平良 |
21.米軍作成地図 AMS L791 琉球列島地図(5万分の1) 石垣 |
22.5万分の1 地形図 南大東島 大正6年測図/参謀本部陸地測量部 |
23.Japan Nansei shoto Okinawa Shima Ora wan No.2582 4th ed., /the Hydrographic Office |
■沖縄戦の地図
米軍が撮影した空中写真は、正確な作戦地図の基礎資料となりました。その後の激しい戦闘で地形が変わるほどの壊滅的な被害を受けた地域もあるため、往時の沖縄の地表の様子を知る意味で、これらの空中写真は重要な資料となっています。米軍が作成した地図は、戦後も米国施政権下にあった沖縄で長く使用されました。
24.米軍撮影空中写真 首里城周辺 |
25.米軍撮影空中写真 与那原町周辺 |
26.米軍撮影空中写真 豊見城~浦添 |
27.米軍撮影空中写真 沖縄本島中部一帯 |
28.米軍撮影空中写真 北谷村~読谷山村 |
29.米軍撮影空中写真 名護町 |
30.沖縄島と周辺離島 立体地図および周辺海域図 |
31.Gazetter to Maps of Ryukyu-Retto and Ogasawara-Gunto Map Series AMS L791 and L881, |
32.アイスバーグ作戦(沖縄戦)戦術用地図 2万5千分の1 IE-SHIMA SW 伊江島 南西 初版 |
33.米軍作成地形図 1/4800 CAMP KUE |
34.米軍作成地形図 1/4800 ITOMAN |
■戦後の地図
一般住民を巻き込んだ激しい戦闘によって灰燼と化した沖縄が、その後復興を遂げていく様子を、地図からも読み取ることができます。しかし、戦中に建設された米軍基地は戦後も拡大し、沖縄の土地利用に障害をもたらしました。アメリカ人のために作成されたドライブ用地図や、嘉手納基地周辺の商店街の図なども作られています。日本復帰後は、大規模な埋立などの開発も進みました。わたしたちの社会や生活のありようを反映して、これからもたくさんの地図が作られていくことでしょう。
35.那覇市全図 第4版 /近藤詮次郎編集 |
36.最新 那覇市及び近郊案内図 /沖縄教科書販売(株) |
37.Okinawa Road Map 1970 /Caltex (Asia) Limited |
39.軍用地および軍用施設/琉球政府企画局 |
42.与1:5000 地形図 魚釣島 /琉球政府法務局臨時土地調査庁発行 |
番号 | 展示資料件名 | 資料年代 | 出処情報 |
閲覧用資料 コード等 |
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■琉球・沖縄のかたち | ||||
1 | 首里那覇鳥瞰図 | 日付なし | 岸秋正文書 | 0000088464(CD) |
2 | 地図 朝鮮国図并中国日本琉球図 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
3 | 琉球国全図 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
4 |
沖縄県管内全図 完 / |
1885年12月版権免許 | 岸秋正文書 | T00012500B(MF) |
5 | Maps: Japan Far East /N. Bellin | 1773年 | E. フライマスコレクション | 000036705 |
6 |
Description Des Iles Lieoou-Khieou |
1824年 | 岸秋正文書 | T00015727B |
7 | 琉球及属島三十六 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
■日本と琉球 | ||||
8 | 三国并無人島并接壊絵図 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00012500B(MF) |
9 |
大日本接壊(壌)三国之全図 |
1816年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
10 | 大日本唐土 輿地全図 嘉永七年版 | 1854年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
11 | 銅刻 琉球諸島全図 全 /大槻文彦 | 1873年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
12 | 北海道諳射訳図 琉球諸島諳射訳図 | 1876年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
13 |
大日本朝鮮八道支那三国全図并 |
1882年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
■戦前の地図 | ||||
14 |
沖縄県地誌略 全 |
1885年4月出版 | E. フライマスコレクション | 0000029651 |
15 |
大日本管轄分地図 沖縄県管内全図 |
1900年 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
16 | 沖縄県管内図 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
17 | 沖縄航路案内/大阪商船 | 1935年発行 | 岸秋正文書 | T00016083B |
18 | 与那国島案内 | 日付なし | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
19 |
日本自鹿児島海湾至台湾 附近支那東岸 |
1895年4月29日発行 | 岸秋正文書 | T00015877B |
20 |
米軍作成地図 AMS L791 琉球列島地図(5万分の1)平良 |
1945年 | 米国収集資料 | 0000006376 |
21 |
米軍作成地図 AMS L791 琉球列島地図(5万分の1)石垣 |
1945年 | 米国収集資料 | 0000007162 |
22 |
5万分の1 地形図 南大東島 |
1936年11月25日発行 | 森田芳雄資料 | T00002732B |
23 | Japan Nansei shoto Okinawa Shima Ora wan No.2582 4th ed., /the Hydrographic Office | 1944年9月発行 | 稲嶺一郎文書 | – |
■沖縄戦の地図 | ||||
24 | 米軍撮影空中写真 首里城周辺 | 1945年4月2日撮影 | 米国収集写真 | ON27835の2枚を合成 |
25 | 米軍撮影空中写真 与那原町周辺 | 1944年10月10日撮影 | 米国収集写真 | ON23972の3枚を接合 |
26 | 米軍撮影空中写真 豊見城~浦添 | 1945年2月28日撮影 | 米国収集写真 | ON24146の9枚を接合 |
27 | 米軍撮影空中写真 沖縄本島中部一帯 | 1945年2月28日撮影 | 米国収集写真 | ON24145, ON24146の33枚を接合 |
28 | 米軍撮影空中写真 北谷村~読谷山村 | 1945年8月18日撮影 | 米国収集写真 | ON24656の9枚を接合 |
29 | 米軍撮影空中写真 名護町 | 1945年8月18日撮影 | 米国収集写真 | ON24656の14枚を接合 |
30 |
沖縄島と周辺離島 |
1945年(推定) | ゴードン・ワーナー文書 | 0000017503 |
31 | Gazetter to Maps of Ryukyu-Retto and Ogasawara-Gunto Map Series AMS L791 and L881, | 1944年10月発行 |
E. フライマスコレクション |
0000023732 |
32 |
アイスバーグ作戦(沖縄戦)戦術用地図 |
1944年 | 沖縄県文書 | 0000061039 |
33 | 米軍作成地形図 1/4800 CAMP KUE | 1949年 | 対米請求権事業協会文書 | 0000108934/081 |
34 | 米軍作成地形図 1/4800 ITOMAN | 1951年 | 対米請求権事業協会文書 | 0000108935/201 |
■戦後の地図 | ||||
35 | 那覇市全図 第4版 /近藤詮次郎編集 | 1935年4月1日発行 | 岸秋正文書 | T00021602B(MF) |
36 |
最新 那覇市及び近郊案内図 |
1953年(推定) | E. フライマスコレクション | 0000023745 |
37 | Okinawa Road Map 1970 /Caltex (Asia) Limited | 1970年 | E. フライマスコレクション | 0000023741 |
39 | 軍用地および軍用施設/琉球政府企画局 | 1971年6月 | 沖縄県刊行物 | G80001315B |
42 |
1:5000 地形図 魚釣島 |
1966年1月25日発行 | 吉田嗣延文書 | 0000096120 |