11月1日 泡盛の日
沖縄の特産品に「泡盛」があります。11月1日は、1989年(平成元)に沖縄県酒造組合連合会によって制定された「泡盛の日」の記念日です。
琉球王国時代、王府は泡盛の製造を首里三箇(現在の赤田・崎山・鳥堀)の焼酎職のみに許可していました。この地域は湧き水が豊富で醸造と蒸留にも最適な場所でした。
琉球藩設置後の1875年(明治8)~1876年(明治9)頃からは、酒造りは民間でもできるようになっていきました。当時の明治政府の政策から、1880年(明治13)に定められた「酒造税則」は沖縄には適用されず、代わりに酒造りに対して課せられた「焼酎税」は、免許料として1軒月額2円のみであり、他府県に課せられたものに比べて非常に安かったことから、製造場数は急増しました。
「琉球国王尚泰から島津石見宛あいさつ状」 T00021972B
1850年代後半に中山王・尚泰(1843~1901)から島津石見(いわみ)に送られたあいさつ状 島津石見は都城島津家の当主であった島津久浮(ひさはや)である。手紙と一緒に宮古上布や八重山上布、泡盛などが送られたと思われ、尚泰の花押が押印されている。
「首里市三箇」 坂口総一郎『沖縄写真帖 第2集』(1925年)大正写真工芸所発行 T00015033B
「沖縄県物産検査所」『沖縄県物産検査所年報 第11回 大正12年度』(1924年)G00019539B
沖縄県物産検査所が1923年(大正12)実施した県内の砂糖、砂糖樽、帽子、焼酎の検査事務の概況と成績結果の統計書。
泡盛、芋焼酎は県外・海外(南洋サイパン)に移出されていました。焼酎検査の概況には、泡盛焼酎の品質は向上し需要もあるが、課題として容器が破損しやすく改善が必要とあります。
沖縄県『沖縄県統計書 大正15年 昭和01年 第03編 産業』(1928年)G00019310B
沖縄県が発行した県内の気象、人口及び職業、各種産業についての統計。「Ⅸ 工業」の酒類には、1922年(大正11)~1926年(昭和元)の那覇市、首里市、島尻郡、中頭郡、国頭郡、宮古郡、八重山郡別の泡盛の醸造戸数、職工(男女別の従事者数)、原料需要高、醸造高が確認できます。
「泡盛製造の中心地 首里市三箇」『沖縄県人物風景写真大観』(1935年)上原永盛 T00014050Bより
資料解説:首里城東の赤田、崎山、鳥堀は三箇と称し、良い泉に富み古来泡盛の醸造地として知られている。年※三万石(約5,400キロリットル)近く生産しているが、県内消費が多く移出金額70余万円である。
※一石は約180リットル
「泡盛工場内米洗場」同資料より
資料解説:以前は田舎では芋を原料として芋焼酎を自家用に製造していたが、現在は泡盛製造に使用するのは外米(外国の米)である。そのため酒造業者に米殻商を兼営する者が出てきている。
「泡盛蒸溜場」同資料より
資料解説:発酵された諸味(もろみ)は蒸溜器に移され管を通って冷却されて白色透明の水滴となって南蛮甕に集められる。酒精(発酵アルコール)量50度内の芳醇な香り漂う美味な国産ウイスキーは市場に出される。
「諸味の貯蔵甕」同資料より
資料解説:古来諸味の醗酵は処理困難な事柄とされている。これにより生産高は勿論のこと風味にも大きく影響するため酒造家の闘心は専らここに集まっているといっても過言ではない。
「佐久本酒造店」同資料より
資料解説:首里三箇の一つ鳥堀にあった佐久本酒造店
「佐久本酒造店の諸味甕」同資料より
「沖縄県物産販売 大阪斡旋所」『沖縄県特産 琉球泡盛に就て 1935年10月』(1935年)T00007281B
泡盛の沿革、製造方法、品質、泡盛の税率と納税期、泡盛の移出状況、泡盛の船積関係などの解説書です。「泡盛の飲方」には、泡盛は度数が40度から45度になるため、ウイスキーのように2、3倍の冷水、お湯、サイダー等に希釈して飲用することもあるが、個別のコップに冷水・サイダーを入れて、泡盛と交互に適宜飲用するのが最も一般的であるほか、ホット泡盛としてコーヒー・紅茶・レモン湯等を加えるのも良く、特にシロップを加えてカクテルにするのも素晴らしいと述べています。
「泡盛の試飲をする比嘉秀平行政主席(琉球政府初代行政主席)県産愛用運動週間?」
撮影地:不明 撮影日:1952年4月~1956年10月『琉球政府関係写真資料 209』琉球政府行政主席官房 0000108919【057688】
琉球政府企画統計局企画調整課「重要産業として琉球泡盛の指定取扱いについての陳情書」『重要産業育成に関する書類』(1960~1961年)RDAE001799
琉球酒造組合連合会長 玉那覇有義から琉球政府第3代行政主席 大田政作あての陳情書。琉球政府は、琉球経済の健全な発展に資するため、重要物産を生産する産業及びこれと関係する産業の健全な育成、振興をはかることを目的に「重要産業育成法」を公布しました。陳情書には、琉球泡盛の税納入高が酒類で過半を占め、戦後から現在まで泡盛業界が琉球政府の財政確保に協力しているとし、今後も保護育成の政策をとって貰いたいとあります。
下記のデータベースより、「泡盛」をキーワードに検索すると、上記以外にも関係資料を抽出することができ、デジタル化済み資料についてはご覧になれます。
【参考引用文献・関係先リンク】
・西原文雄「研究ノート 明治大正期の泡盛と税制問題」『沖縄史料編集所紀要 第02号(1977年)』沖縄県教育庁文化課 G00019474B
・『沖縄大百科事典 上巻』(1883年)沖縄大百科事典刊行事務局編集・発行人 比嘉敬 T00000187B
・萩尾俊章「沖縄における神酒と泡盛の諸相」『沖縄県立博物館紀要 第18号』(1992年)沖縄県立博物館 G00014325B
・『沖縄県酒造協同組合30年史』(2007年)沖縄県酒造協同組合 0000072479
・萩尾俊章「戦前の新聞資料にみる泡盛ならびに泡盛産業を取り巻く様相」『沖縄史料編集紀要 第36号(2013年)』沖縄県教育庁文化財課史料編集班/沖縄県教育委員会 0000124182
・山内昌斗「〈論文〉沖縄における泡盛産業の生成,発展,衰退そして再生に関する歴史研究」『商経学叢 第68巻第1号』(2021年)近畿大学商経学会