『旅の家土産』(たびのいえつと) 琉球之巻
明治34年2月28日発行。表紙のタイトルは「旅の家つと」とあり、(奥付は「旅の家土産」)、全国の名所旧跡の写真集といえる「旅の家つと」シリーズの第35号です。「つと」とは、藁などで包んだものを指しますが、それが転じて「土産」の意味にもなりました。「旅土産」としての写真集、といったところでしょうか。
この「琉球之巻」も、首里城や波上宮、識名園といった名所の写真が24点あり、「沖縄県」となってから20年ほど経過した時期の風景が記録されています。
名所の写真ながら、斬新なアングルも見られるこれらの撮影者が誰であるのかについては残念ながら明確な記述がありません。しかし、奥付に「発行兼印刷者 中尾新太郎」「発行所 光村寫眞部」「印刷所 光村寫眞製版部」とあり、発行兼印刷者の中尾の住所には「光村利藻方寄留」とあることから、光村利藻の関与が推測されます。
光村利藻は写真家でもありましたが、明治34(1901)年、神戸に「関西写真製版印刷合資会社」(現・光村印刷株式会社 本社東京)を設立し、写真・美術印刷の草創期に活躍しました。
写真の解説には、沖縄が日本の領土となったことを肯定的に捉えるものが多く見られますが、この時代を反映した記述といえるでしょう。
この「旅の家つと」のシリーズは、部分的な欠本はあるものの国立国会図書館に所蔵があるようです(この35号は欠本)。「非売品」と奥付にあることから、どのような事情で撮影・出版されたものか、写しとられた風景が趣深いだけに興味が湧く資料です。
閲覧用資料コード:T00008752B ※閲覧カウンターでご請求ください。